ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

マイケル・バーリ(サイオン・アセット・マネジメント)の凄味。フォーム13Fより

昨秋からマーケットの波乱が続いている中でとりわけ異彩を放っているのがマイケル・バーリである。

2022.5.19日経朝刊記事「米機関投資家IT株に見切り」において久々に名前が登場してきた。大手機関投資家の四半期ごとの報告による開示「フォーム13F」において、相変わらずの分析眼で「アップルが下落した時に利益の出る‘売る権利’」を新たに購入しているとのことであった(プットオプション)。

ちなみに、SECのサイトに行けば、フォーム13Fは一般の人でも見れます。「U.S.SECURITIES and EXCHANGE COMMISION(証券取引委員会)」にアクセスし、「FILING」のタブを押す。その中で「Company filing Serarch」を。画面上方にある検索窓に「scion asset management,LLC」と打ち込めばサジェストが途中で出ます。選択すると四半期ごとの「Form13F-HR」が出ます。対象時期を選んで、「form13fInfoTable.html」を選ぶと、同社のポートフォリオの銘柄を見ることができます。現在ではメタ、アルファベット等も保有しているようです。

マイケル・バーリの名が世に知れ渡ったのは、マイケル・ルイスのベストセラー「世紀の空売り」で世界金融危機リーマンショック)前に住宅ローン市場に空売りを仕掛け莫大な利益を獲得したことが取り上げられた時ではないでしょうか(のちにマネーショートとして映画化)。それまでも類まれな分析力とパフォーマンスで米国ではマニアックな知名度はあったそうですが、世界的なビッグネームになったのはこの作品への登場からだと思います。

サブプライムローン証券化された商品の目論見書に記載された物件を丹念に調べ上げ、クレジットデフォルトスワップCDS)への投資によって、支払い延滞が起こり住宅ローン市場が崩壊すると膨大な利益が上がるポジションを組んでいました。金融危機を的中させたという著名投資家は多いですが、トレンドやブーム追随でなく独自に早期の段階から下落にかけていた投資家はそう多くはないはず。元医師で、対人関係を嫌い、自室に籠って目論見書を読み込む姿はどの投資家とも異質です。

筆者はマイケル・ルイスが好きで彼の処女作「ライアーズポーカー」1990年11月の初版本を持っているのが自慢でもあるのですが、「世紀の空売り」に記述されたバーリのエキセントリックな言動に魅了され、ニュースにその名前が出るのを楽しみにしていました。

近年の話題といえば、2021年テスラのプットやARK ETFのプットを大量購入したことでARKのトップであるキャシー・ウッドとツイッター上で論戦をしていたことが挙げられます。

両者は極端に投資哲学が異なり水と油の様な関係ですが(ファンダメンタルズかイノベーションか)、現状の相場水準においてはバーリに軍配が上がったのではないかと言えます。

今回のフォーム13Fからは、ヘッジファンドの苦戦が明らかになってきており、ブリッジウォーターのGAFA売りやタイガーファンド系のネットフリックス売却など、グロース株離れが顕著です。今後もファンダメンタルズ重視のバーリの動向は注目に値すると思われます。