ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

ウクライナ侵攻から4か月

ロシアのウクライナ侵攻から4か月、様々な思惑が外れているが、地政学的なリスクとマーケットを分析したデータが多々公表されている。

ロシアルーブルの下落率は1998年のロシア危機時に80%(1997.7~2001.12)、2014年クリミア併合時48%(2014.7~2015.1)、その都度ルーブルショックと言われ世界経済を揺るがした。しかし今回は一時的にルーブルは急落したものの、現在は侵攻前をはるかに上回る水準で推移している。過去の経験則が当てはまらない事態である。

ただ、過去最大規模での経済、金融制裁が課されており経済への影響が長期化すると思われる。資源輸出という強みがある半面で、ロシアは機械、自動車、医薬など輸入に頼るところは大きく、規模こそ大きくはないが食料、日用品の値上がりは国民生活への悪影響が懸念され、政権が支持を維持できるかどうかが焦点となる。(1998,2014それぞれのインフレ率は92%、15%)。

東海東京は、この1970年代以降に発生した主だった紛争等の有事(中東戦争、アフガン侵攻、湾岸戦争)16回について株式市場の分析をした。

その結果、S&P500は調整する日数は19日(中央値)、下落率は5.1%。そして株価が底を付けてから、14回のケースで1年後に株価は上昇していた。下落した残りの2回のケースは第4次中東船、アメリ同時多発テロでいずれも景気自体が後退していた局面であった。

 

翻って、今のマーケット環境に当てはめるとどうなるか。下落した2/16のケースに当てはまる可能性が高い。

今は景気拡大時期にはないということ、前例がないコロナ禍における緩和から前例のない規模とスピードで金融引き締めに入ること、供給体制の不完全さ、ロシアの国際市場からの締め出しによる資源価格高騰、それらから派生するインフレを考慮すると、1年後に株価が上昇していると考えるのは現実的でない。

マーケットには「遠くの戦争は買い、近くの戦争は売り」「銃声が鳴ったら買え」といった格言がある。後者の発言はネイサン・ロスチャイルドのセリフであるが、ワーテルローの戦いでのナポレオン敗北を読み膨大な利益を出した逸話がある。

日本でも「人の行く裏に道あり花の山」とう格言もあるくらいで、下落率や株価水準からすれば、今が安く買う好機であることは明らかではあるのだが、ロシアと経済的結びつきが強く深刻な状況の欧州のように、まだ強気にでるには材料不足といったところではないだろうか。