ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

データセンターを国策に

ロシアのウクライナ侵攻で様々なリスクが顕在化したが最も恐ろしいのは社会インフラに直結した施設への攻撃ではないか。チェルノブイリへの攻撃は言うまでもないが、通信インフラが攻撃されるリスクも意識すべきである。

早期にウクライナ側がサイバー防衛、サイバー攻撃を前面に押し出したことで通信衛星の重要性が強調されたが、それ以上に今後危惧されるのは爆発的に増えたデータやクラウド上で多くのシステムを格納するデータセンターにおける物理的セキュリティーの重要性が今後高まってくることである。

データセンターの特徴を挙げていくと

  • 多数のサーバーを設置するため広大な敷地が必要となる
  • 使用する電力量も相当になるため電源が近くになければならない
  • 利用される都市部に近いことが望ましい
  • 保守、管理する人員や家族が生活でき、アクセスしやすい立地が必要
  • 海外からの海底ケーブルが引き揚げられる近くにあるほうが望ましい

地震津波、災害対応もなされた設計ではあるが、これからはテロ対策、もしくは立地や分散といった国防の観点からの対応も必要になってくると思われる。

そして大きく状況を変えることができる可能性があるのは技術革新である。それまでは建設が困難であった立地を有効に活用することができる新たな設置方式や世界的な電力不足を解消できる省エネ技術が発展すれば、産業、国防の観点からも利益は大きい。

先行していたのは大手IT企業でGOOGLEが2008年に海上データセンターの特許を取得、マイクロソフトは2015年にコンテナを沈め実験を行っている。利点として海水を冷却に使えることや潮力、波力、風力、太陽光など自然再生エネルギーの利用がしやすい点が挙げられる。また同社の調査では世界人口の半数が海岸から200キロ以内に住んでいるとのことで利便性も高い。

日本でも追随する動きがある。民間企業連合で開発が進んでいるのは液浸技術。空冷より効率がいいことが海水同様に当てはまるが6月21日の日経で取り上げられたのは「KDDI三菱重工NECネッツエスアイ」が開発中の液浸技術で、専用に開発されたオイルは空気の1000倍熱を奪う力がある。また故障率が下がるという副次的効果もあり、空気に触れずほこりが付きにくい、物理的な作業回数が少ない、腐食防止の窒素が酸素に触れるよりも機器への負担が少ないと考えられる。

また1970年代からデータセンター建設に携わっていた大成建設が開発している液浸技術は、小スペースでの利用が可能である。オフィスの空きスペースや制約の大きい場所に設置を行うことで、多くの電力と処理が必要とされる医療施設や今後利用が拡大してくるメタバース領域等の運用に利用されることが見込まれる。

そして自治体が音頭を取って推進するケースもあり、北海道美唄市ではホワイトデータセンター構想を策定し2010年に世界初の実証実験をおこなった。除雪作業で集められた雪を再利用しサーバー冷却に用いている。年間を通して溶けない雪を利用し不凍液を循環させている。、排熱の利用も同時に行い農産物の栽培、水産物の養殖に充てている。自然由来の素材を使い、安い土地代と排熱を利用とした二次的事業によってコスト競争力を高めるのと同時に地産地消を進めることが雇用、経済を活発化するのに一役買う好事例である。

 

これからの時代でデータセンターに求められる要件は非常に多い、ただそれらを充足する最適解を創出することができれば、それは経済的にも国防上でも国益に適うことである。国産半導体の育成と共に、国として成長戦力の一翼をデータセンターに見出してみるのも一策ではないだろうか。