ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

ChageSPOT が体現する日本企業の成長戦略解

駅やコンビニ、街中で頻繁に見る機会が増えた「ChargeSPOT」。モバイルバッテリーのシェアリングサービスであるが、INFORICHという日本企業が展開しており、2018年4月からサービスを開始し、わずか1年で国内47都道府県に展開、現在25000台以上の設置がされており国内シェア90%を誇る。海外展開も行っており香港、台湾、タイで10000台の設置を完了させている。使用方法は極めてシンプルで、充電が必要な時に、近くにあるバッテリースタンドのQRコードを読み込んでバッテリーを借りて、どのスタンドで返却しても良い。コロナウィルスまん延後、スマホタブレットなしでの生活は考えられなくなった現代のニーズを的確に汲んだサービスである。

急成長を遂げたこのサービス、中国企業のビジネスモデルを輸入したものである。

創業者、秋山広延会長が香港を訪れた際に知ったサービスであるということで、中国では2015年ごろから普及していた。ただちに日本でも事業化すべく、現地大手と提携を試みたが折り合わず、貸出機開発を行っていた香港のスタートアップ企業を買収し2018年に事業化を行った。その後はゴールドマンサックスからの資金調達をするなど破竹の勢いで独占的シェアを獲得した。

いわゆる、ソフトバンク孫正義社長が有名にした「タイムマシン経営」である。ヤフーのインターネットビジネスを持ち込んだことが大成功となったようにシリコンバレーの動向を研究し、日本で大企業が進出していない分野を発掘し先行者利益を獲得する経営手法である。しかしこの事例は、中国発であるということに意味がある。中国イコール模倣(コピー)という印象で語られるが、ビジネスモデルに関しては既に日本の先をいっている。自動運転、電子決済、動画投稿、シェアエコノミーの普及は非常に高く、デジタル化をすんなりと受け入れる土壌があるのであろう。スマホの普及率も日本が65%であるのに対して、中国は83%。日常にスマホが浸透する中で、生活する上での不便さや非効率を解決するアイディアが事業化されやすいという背景もあるだろう。

共同購入で成功を収めた拼多多(ピンドゥオドゥオ)やTicTokのバイトダンス、EC業者によるライブコマース、中国企業が開拓しマーケットを拡大したケースは多々あり、日本企業も中国市場のアイディアやバイタリティを研究する必要がある。もはや日本は模倣される側から、遅れを取り返すために模倣しなければいけない立場にあるという事実を受け入れるべきである。

2020年NYに上場した名創優品(メイソウ)。店のつくりはユニクロのようで、品揃えは無印良品、値段帯はダイソーユニクロ風のロゴからしても何にインスピレーション受けたのかは一目瞭然で、日本企業のいいとこどりである。冒頭のChargeSPOTの秋山社長と同じように、メイソウ創業者の一人とされている葉国富CEOは大の日本びいきで、何度も日本と中国を行き来するうちに雑貨のほとんどが中国製であることに着想を得たということで創業に踏み切ったそうである(日本人デザイナー三宅順也氏が設立者とも言われている)。ただし海外展開力やマーケティング、経営スピード等は注目すべきである。2013年創業だが既に90か国4700店舗にまで急拡大し、昨年撤退はしたが日本に逆上陸も果たした。

これからの日本企業はアメリカの革新性や中国の迅速性さに食らいつかなければならない。模倣と揶揄されようとも、多かれ少なかれ既存のビジネスや技術の集積が現在を作っている。現在の自動車産業をT型フォードのコピーだとはだれも思わない。トヨタカンバン方式が米国スーパーマーケットのジャストインタイム方式から着想を得たのはあまりにも有名である。海外のトレンドを追いかけながらビジネスを輸入し、海外に日本のビジネスを輸出する両輪が作用してこそ、日本企業の復活がなされるのではないだろうか。