ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

マルウェアのサブスク②

マルウェアが猛威を振るう中で、存在感を高めているのはイスラエルである。
ITの中心はシリコンバレーであるが、それに深圳、イスラエルを加えた三大IT拠点になりつつある。
シリコンバレーを目指す起業家が多いのは歴史がなす技であるが、近年では積極的に中国企業イスラエルに進出をしている。

イスラエルの人口は東京都より少なく、面積は北海道の1/4でしかない。立地的にも恵まれたわけではなく、資源豊富というわけでもないにも関わらず発展を遂げられたのは、様々な制約下において国の存亡を欠けた国家戦略や仕組みが上手く作用したからであろう。半導体立国となった台湾しかり、地政学的に不安定が故の選択がもたらした経済的成功は、これからの日本における「新しい資本主義」に活かすヒントがあるのではないだろうか。

イスラエルの特徴としてまず挙げられるのは、軍事技術を応用した民生技術の存在である。それ故に、サイバーセキュリティ分野が非常に強い。歴史的にイラン、サウジアラビアといった大国をはじめとするアラブ諸国に周囲を囲まれていることが防衛力の強化を促している。
軍事技術の面でも兵器高度化や防衛技術、自動運転による無人化技術など民間にも転用ができる高度技術が蓄えられていく。またその際に、差し迫った脅威があることに対して、小国であるということが意志決定の早さという利点になる。
同国では徴兵制があり、18才以上は兵役が義務化されている。18才以上の男女は進学ではなく6ヶ月の基礎訓練のために入隊となる。イスラエル国防軍の特色を示すのがタルビオットと8200部隊(イスラエル軍とは別組織)で、何れも優秀な人材を選出し特別なプログラムで訓練を行う。
タルビオットとは数学、物理、コンピューター科学等の教育を施し、科学技術分野でのリーダー育成のエリートプログラムとでも言うべきものである。
そして世界的にも高名なシステムが8200部隊である。部隊出身というだけでも箔が付き、ビジネスを有利に進めることがとも言われており、世界中のIT企業や政府から引く手あまたである。高度なサイバー技術を持ち、セキュリティだけではなく諜報活動も行っており、イランの核施設を停止させたと言われている。部隊出身者の起業としてパロアルトネットワーク、チェックポイントソフトウェア、サイバーアーク等がある。
また8200部隊が有名なのは独特な人材発掘方法である。兵役が男子では3年と時間的な制約があるため、ポテンシャルを見極めることに重点がおかれている。所謂ペーパーテストによる選抜もあるが、個人面談を通じた協調性やリーダーシップ、学習能力の高さが判断ポイントになるそうである。ただ優秀であるだけでは採用されず、面接を通じてパーソナリティや価値観、知性が問われ、一説によると採用は1万人に1人と言われている狭き門である。言語やソフトウェア、ひいては諜報活動等を限られた時間で最大限の教育を施すため、極めて高度なプログラムが組まれており、イェールやハーバードと同列に語られることもある。

そしてイスラエルには開発した技術リソースを最大限に活かす連携があり、軍、官、民、学の各主体がエコシステムのように機能している。国をあげての環境整備が外国資本やベンチャーキャピタルを引き付ける。インテルが買収した自動運転のモービルアイもイスラエル発である。
世界時価総額上位で研究開発拠点をイスラエルに持たない起業はないと言われている。日本企業もその輪から外れないようキャッチアップしなければならない。

 

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