核融合は実現するか
猛暑が続く中で電力不足が参院選に影響を与える影響が大きくなりそうである。論点は原発再稼働を認めるかどうか、もしくは原子力そのものをどう向き合うか。
小型原子炉など新技術の開発も各国で進むが、希望を含めて核融合について取り上げたい。
核融合は50年以上の研究歴があり、達成は人類の悲願で「地上の太陽」とも呼ばれる。通常の原子力発電では核分裂時のエネルギーを利用するが、太陽で起こっているのは核融合である。軽い原子核が重い原子核に変わる際のエネルギーが発生している。水素の原子核4個が融合しヘリウムに変わるが、あくまで太陽中心部の高圧、高温度、高密度状態において活発化した原子の動きがあるからであり、それを地球上で再現する困難さは想像を絶する。
それでも研究や技術開発が盛んに行われるのはメリットが多いからである。
エネルギー効率
膨大なエネルギー量が発生し、試算によると実現すれば1グラムの材料から8トンの石油に相当するエネルギーが得られる。
安全性
原発は核分裂時の連鎖反応を利用するため制御に課題があるが、核融合では材料が尽きると反応が止まる。
高レベルの放射性廃棄物が出ない。低レベル放射性物質が生じるが、数十年の保管でレベルが低下し、炉材料として再利用が可能である。
環境性
CO2の排出を抑えることできる
課題としては技術開発、建設費が高騰する懸念であるが、近年の脱炭素の動きが民間投資を呼び込み実用化を早める可能性がある。従来は日本、米欧、中国、インドなどが参加し、フランスで行っているITER(国債熱核融合実験炉)計画が最有力とされていたが、民間の相次ぐ参入で勢力図が変わってきている。
日本ではINPEXが本格的な開発に乗り出しており、世界に40社以上のスタートアップ企業があると言われる。
話題をさらったのはコモンウェルスフュージョン(米)、ジェネラルフュージョン(加)の2社である。それぞれマイクロソフトのビル・ゲイツ、アマゾンのジェフ・ベソスから出資を受けている。イーロン・マスク、ベソス、リチャード・ブランソンが宇宙飛行で競い合ったような構図が核融合でも起こっている。大富豪が投じたリスクマネーが最先端技術開発への投資を牽引していている。
またgoogleがプラズマ制御にAI技術を提供する等、各社レーザー、高温超電導磁石をはじめとした最先端技術の開発に余念がない。
スペースシャトル運航停止後、宇宙開発を盛り上げたのは、googleの月面探査レースやスペースXの宇宙飛行であったとも言える。核融合技術が官民の連携によって実用が早まることに期待したい。