安倍首相の功績
どの業界でも営業に政治と宗教の話題はタブーである。証券業界でも政治的な立場を明確に打ち出すことはご法度であるが、客観的なデータをもとに「好ましいか好ましくないか」は存在する。政権支持率と外国人投資家の動向は相関性が高いことが指摘されていたり、政策が大企業、富裕層向けか大衆向けなのかで投資家の反応は180度異なる。
安倍元首相が銃撃され意識不明という耳を疑う一報が飛び込んできた。
証券業界は2012年第二次安倍政権から始まったアベノミクス、安倍総理と連携を組んだ日銀黒田総裁の異次元緩和、この2つのエポックメイキングがなければ、目も当てられない状況であったのは間違いない。
2007年に始まる金融危機、2011年の東日本震災、欧州債務危機。先が見えず、トレンドが上向いてもすぐに跳ね返されるような期間が長く続き、現場は疲弊し活気は失われていた。
現在の岸田総理の新しい資本主義がそうであるように、アベノミクスに対しても懐疑的に斜に構えるような向きは強かったが、株が上がり円安が進行すれば投資家は報われ、外務員も損切りの提案をする必要も評価損の言い訳をする必要もなくなる。つまるところ、証券業は株が上がる前提にたったビジネスである。
政策に賛否はあれど、証券業界がアベノミクスで食い繋いだ側面は否定できない。
第1次政権(2006/9/26~2007/9/26)
日経上昇率 5.1%(15638→16435)
第2次政権(2012/12/26~2020/8/28)
日経上昇率 127%(10080→22882)
2012年の総選挙で政権交代が決まり打ち出された三本の矢「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」。当時80円台半ばだったドル円、10000円の攻防であった日経平均が転換点を迎えた。2015年には15年ぶりの20000円突破、2017年10月衆院選後の日経16連騰、長期安定政権を築けた意義も大きいが、何より投資家に訴えるアピール力が突出していた。
2013年ニューヨーク証券取取引所で「バイ・マイ・アベノミクス」と宣言したのはあまりにも有名である。実際に海外投資家はデフレからの脱却を期待し、一時20兆円を買い越した。
2020年8月28日、辞任の一報が入ると日系は一時600円の急落を見せた。銃撃を受けたと報道が入った今日もマーケットは昼休みであったが先物、為替市場には動揺が走った。安倍元総理がいかに市場に好かれているか、影響力があるかが表れていたように思う。
證券業界に携わった者として冥福を祈りたい。