ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

言語AI

近年、各企業の問い合わせ窓口にAIが使われることが増えてきた。店舗、コールセンターが閉まっている深夜でも問い合わせることができ、電話口で待たされることもなく回答を得ることができる。現時点ではまだ高精度とは言えないが、省人化のメリットから導入企業は増えると思われる。

言語AIは2018年Googleの「BERT」を皮切りに各社が開発を競ってきた。

代表的なAI「GPT-3」を開発したオープンAIは2015年に設立され、現在は運営から離れているがテスラのイーロン・マスクも設立に携わっていた。2019年にマイクロソフトからの出資を受けており2020年に「GPT-3」を発表した。

AI言語の進化も著しく、文章を理解し検索精度を高める、文章を要約する、分析するといった段階から、文章を作り出す、プログラミングをする段階まで来ている。

「GPT-3」は単語を打ち込むだけで長文の執筆もでき、その文章の出来、人間が書いたとしか思えない自然さから、AIであることを伏せて執筆したブログ記事がオンラインニュースサイトで首位になるといった現象も起こった。また「GPT-3」は対話もできる、掲示板レディットで他のユーザーとのコミュニケーションを行った。

髙い言語能力が可能になるのは、膨大な情報量とそれらを関連付け繋げていくアルゴリズムの変数パラメーターが上がってきていることが挙げられる。「GPT-3」の1世代前の「GPT-2」では15億個であったのが、1750億個にまで増えた。読み込んだ情報量も膨大で数千億語の学習を行い、人間が一生かかっても読み切れない量を積み上げている。

言語AIの利用拡大が巨大市場を作る可能性があり、契約等の書類作成、翻訳、企画提案書、報告書など様々な分野が想定される。

東大松尾研究所発のスタートアップ「ELYZA」はキーワードを入力するだけで、数秒でメールを作成する技術を応用させビジネス展開を目指し、SOMPOとも提携し25万件に及ぶコールセンターの音声記録の要約する取り組みも行う。国内ではほかにもLINEがネイバーと共同で大規模言語モデルの開発を行っており、2700年分の新聞を読み込ませ能力向上を図っている。

 

課題となるのはコストである。今まではテック企業の資金力によって主導されていた側面と、中国の北京智源人口智能研究院(悟道2.0、パラメータ数1兆7500億)のような国主導の側面があり、開発、運用を行うには相当な費用が掛かる。自然言語プラットフォーマー争いが活発になる上で資金面からの出遅れは許されない。

そして、使用したアプリ、プログラムが増えてきておりAI言語の利点でもあり脅威でもあるのは、学習するほどに進化していくことである。

悪用されてしまった際の、社会への影響は未知数で、差別的、攻撃的な文章が構築されてしまうことや、過激な政治思想を産み出してしまうこともあり得る。また情報流出のリスクや個人情報を学習しすぎてしまう危険性も指摘できる。SFのようなAI指導者が生まれる可能性すらあり、巨大言語モデルとの共生をいかに模索するか、制度の設計も必須である。