潮流発電を国策に
今年の猛暑に伴う電力逼迫が日本のエネルギー政策の試金石になるのは間違いない。原子力とどう付き合うのかという高度に政治的な問題も当然であるが、それ以上に重要なのは再生エネルギー普及を推し進める制度とインセンティブをどう策定するかである。
化石資源に乏しい日本の国土にマッチした再生可能エネルギーをいかに定着させるか。
コロナウィルスが企業や個人にデジタル化による新常態を強いたように、ロシアのウクライナ侵攻を契機としたエネルギー危機は日本に思い切った舵取りを強いているのである。
日本は化石資源に乏しいが自然由来のエネルギー源には恵まれている。海に囲まれていることや火山帯が存在していること。そしてなにより技術力で先行している優位性がある。
先般話題になっているのは、先行3海域で入札が行われた洋上風力であるが、海洋エネルギーの利用は風力だけではない。
①潮流発電 潮の満ち引きを利用する
②波力発電 波の上下を利用する
③海流発電 海流を利用する
④海洋温度差発電 表層と深層の温度差を利用する
といった方式が今後有望である。
これらの方式によって生み出された電力コストが低減されてくるのであれば、自然エネ安定供給の脱炭素社会が一気に近づく。太陽光や風力とは違い、気候に左右されない電源になるからである。NEDOの試算によると日本の年間の発電量の1割程度、820億キロワットの潜在能力があるとのことで、2018年に海洋基本計画が閣議決定、2019年に再エネ海域利用法が施行され今後実証実験や環境整備が始まる。
現在国内勢では九州電力や川崎汽船が実証のための潮流発電機設置を行っている。潮流発電は海底に土台とプロペラを設置し、引き潮の力で発電をする。潮の流れが速いほど発電量は多くなる上に、満ち引きの規則的な周期が供給予測を容易にすることができる。商船三井は波力、海洋温度差発電で先行し、IHIは黒潮を使った潮流発電で中心的役割を担う。
まずは離島での急ピッチな導入が急務となってくる。一般的に離島では本土から電線を引くことが困難であるため、ディーゼルエンジンでの発電を行うことが多く、経産省によると石炭火力の2倍程度のコストがかかっているとの試算である。
クリーンであり、資源枯渇の心配がなく地球の動きそのものが動力電源である再現性は他のエネルギー源にはない特徴であるが、デメリットもある。
これらの方式における問題は地上と違い設備の大型化が難しいこと、自然環境への影響が未知数であることが挙げられる。
技術的な向上は当然のことながら、いち早い実証によるデータの蓄積、売電供給実績を上げることが急務になる。またその成果をもって、FITを他電力並みにし、洋上風力のように海域を指定することで政府としても導入普及を急がねばならない。東日本震災が原発再考を促したように、ロシアのウクライナ侵攻が日本のエネルギー政策を抜本的に見直す好機となるはずである。