ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

中国脅威論と愛国心

米国において中国脅威論が叫ばれて久しい。GDPや軍事、AIといった分野で遠くない未来に米国が凌駕されるというものである。それには説得力もあり現実的な脅威である部分も多々あるが、実際には政権に対する各省、業界団体のロビーイングによってもたらされ、盛られた部分がメディアを通じ増幅されたところも少なからずあるように思える。

冷戦、テロ、次に国を結束させるトピックは中国ということではないだろうか。歴代大統領は共産圏の脅威を訴えることで求心力を保てたであろうし、ブッシュ政権はテロへの脅威から20年近くに及ぶアフガン駐留に踏み切った。トランプ政権のころには厭戦感が高まり、経済的な負担も相当になっていたからこそ、中国への姿勢を厳しくし貿易戦争を仕掛けたとみることもできる。

ロシアにアメリカが派兵しない理由も、防衛義務がない点より戦略的な利益がないことが強調されているようにも感じられる。NATO非加盟のウクライナを守る義務はなく、ロシアと対立するリスクを負う必要もない、資源価格高は世界一の資源輸出国アメリカの立場を有利にするというメリットがある以上、派兵する予定は今後もないであろう。

過去アメリカが派兵したソマリアボスニア、対テロ作戦の一環としてのアフリカ・中東諸国への軍事活動はそもそも経済的な恩恵を享受できるような類の戦いではなく、世論の支持を得られない上に負担も相当に大きいものであった。極地的な対テロ、紛争、内戦においては「世界の警察」なることはできても恩恵は少ない。

一方、主権を持った大国相手の対立でアメリカほど存在感を出せる国はない、そして米国も超大国としての存在意義を、大きい相手と対峙した時に強く感じているかのようでもある。それ故に急成長を遂げた中国がその格好の相手であり、アメコミやハリウッド映画で見る構図、「ヒーロー」対「敵」そのものである。ただ注意を要するのは、お互いに必要としているというところでもありその意味で中国は「好敵手」と言っていいだろう。

米国が歴史的に結束できていたのは近代において、第二次大戦でファシズムを敵にした時、冷戦期ソ連と対峙した時(1980年代バブル期の日本もそうかもしれない)であると考えられるが、ベトナム戦争時には結束は起きなかったし、2001年にあれほどの惨劇に見舞われながらもその結束はアフガン撤退とともに雲散した。社会的な分断が大きくなっていく中で、アメリカを一つに結び付けるアイデンティティを作れるのは中国という存在だけなのかもしれない。