ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

南米のリチウム

リチウムはEVの主要部品であることから新時代における「白い黄金」とまで言われる。ロシアのウクライナ侵攻も相まって過去1年で5倍以上に値段が高騰した。

埋蔵量が一番多いのは南米で、生産量でも三分の一を占めている。チリ、アルゼンチン、ボリビアにまたがる地域はリチウム三角地帯とも言われている。

しかし、それらの国々が資源を押し出した外交に打って出ることや、外資を呼び込み積極的な開発で経済成長を目指すという姿勢を見せてはいない。

シェアは多いものの南米固有の歴史的、文化的背景が開発を遅らせており、特にボリビアの遅れが顕著である。民間企業が南米で資源採掘に乗り出すには政治的な安定性や運営制度の透明性があって初めて成り立つものであるが、それらが欠けている。

ボリビアは世界最大の埋蔵量を誇るウユニ塩湖があるが、計画が進捗することなく撤退を余儀なくされる外資企業が多く採掘が進まない。地元住民の抗議活動で政府が締結した契約が破棄に追い込まれたケースもある。植民地時代の鉱物収奪の歴史が「自国が外国資本の食い物にされ、国富を奪われる」というトラウマを生み出している部分もあると思われる。また社会主義政権が長く続いたことからも迅速な収益化が図りづらいという背景もあったのではないか。

リチウムはその性質から商業的に採算が取れるようになるまでの道のりは長い。埋蔵量では南米が突出しているものの、生産量ではオーストラリア、中国が中心的であるのは費用の面で南米が劣るからである。リチウムは化学反応が起こりやすいため単体の鉱物として採掘されることはなく抽出する際の工程や加工において費用が多分にかかる。オーストラリアでは鉱石から、南米では塩水から抽出される。そして新規の鉱床から採掘、商品化までに5年はかかると言われるため契約時の条件が極めて重要になる。ロイヤリティーが高すぎると開発計画は頓挫することとなるがチリは50%と言われている。メキシコでロペスオブドール大統領がリチウムはメキシコ国民のものであると宣言していたが、リチウム電池やEV燃料に関する技術革新は新素材の登場やAIの活用で早まっている、経済的に誘因をもたらすような配分と採掘に乗り出さなければ南米諸国全体にとって宝の持ち腐れになってしまうことも考慮すべきであろう。

 

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