ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

電力不足に考える太陽光発電

資源高が長期化し電力需要が高まる夏、冬に安定供給が危ぶまれ、6日松野官房長官は記者会見で5年ぶりの「電力供給に関する検討会合」を開くと表明した。脱炭素という中長期的な転換が強いられる中でのエネルギー不足という難局に各国政府は立たされている。

解決には外交的努力や政治的働きかけ経済安全保障の確保といった様々な課題が山積みであるが、その一つとして「技術革新」も当然のことながら解決策となる。

610日日経にリコーの薄膜太陽電池量産の報道があった、昨今の太陽電池のトレンドについて考察してみたい。

太陽電池には大まかに以下の方式がある。

①シリコン型 ②化合物型 ③ペロブスカイト型 ④タンデム型 ⑤有機薄膜型

 ①従来型。シリコンの結晶を成長させて作る。 

 ②銅やイリジウムを使い作られる。量産可能であるが変換効率が10%程度しかないため普及に至らず。

 ③ガラスやプラスチックに液体を塗布することで作る。2009桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授によって発明された日本発の技術。重量はシリコン型の10分の1程度、柔軟性がありシリコン型では設置ができない場所でも利用可能。発電効率はシリコン型と同程度の10%~20%。コストはシリコン型の半分。耐久性が低く約2年程度での交換が必要。

 ④シリコン型の上にペロブスカイト型を乗せたハイブリット型。発電効率30%近い。

 ⑤ペロブスカイト型と同様、軽量で柔軟性があり、コストもシリコン型の半分程度で抑えられる。ペロブスカイト型より発電効率では劣るものの耐久性の点で優位である。

 

現在の太陽光普及率を計る手段として平地における太陽電池の設備容量を計る方式がある。2019年時点で日本は主要国の中で突出してその数値が高く、2位のドイツの2倍以上ある。これが意味することは、日本は国土に占める平地が少なく、既に飽和状態であるということである。景観や生態系への影響、環境への懸念から発電設備設置を規制する自治体が多く、そのことで平地に発電施設が集中してしまっている背景がある。それを解決するのが軽量で柔軟性があり折り曲げての使用も可能なペロブスカイト、有機薄膜型である、今まで利用ができなかった建物外壁や窓、自動車といった新たな設置スペースを生み出す可能性がある。

ただし注目のペロブスカイトであるが問題もある。日本発の技術でありながら基本的な部分において海外で特許を取得していない。前述の宮坂氏が大学ベンチャーとして創業したぺクセルテクノロジーズは国内で基本的技術特許は抑えているものの、高額費用がネックとなり海外特許を申請しなかったそうである。海外企業は日本国内で特許登録された情報を活用することで、特許料を支払うことなく生産に臨むことができる。技術流出が起きてしまっているのである。太陽電池は参入障壁が低く、開発競争が激しい。また新たな方式が続々と生まれてきているため、研究の遅れは国際的な競争力を失うことに他ならない。中国では太陽電池開発に日本の数十倍の開発者がおり実用化を進めているとの調査もあり、国家重点研究開発のテーマに設定し材料開発や大型化を進めている。IEAの分析によると、向こう50年で太陽電池の導入量は2020年の20倍に増え、全発電量は10倍になるとしている。超巨大市場の誕生に手をこまねいているようでは後塵を拝すこととなってしまう。

今回報道があった薄膜太陽電池に関しては、2035年までに市場規模が5倍になるという調査がある。そして薄膜太陽電池は材料候補が数十万種あると言われ、ペロブスカイト型が数種類しかないことと比べ、極めて大きいポテンシャルがある。官民がともになって、制度策定と研究開発を進めていかなければならない。

 

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