ShiRaSe’s blog 元証券マンの雑記

20年の証券リテール営業を経験し、私見を雑記的に書き留めていきます。

グロース株の二極化

5月24日の日経記事で「東証グロース企業1~3月決算。DX、医療、最終損益改善」との報道があった。損益改善が顕著だったのは医療、悪化が顕著だったのはEC関連とのこと。

確かに上位、下位のランキングを見ると、上位はMRTやテックファーム、下位にはメルカリやMTGが記載されていて、トレンドとして有意でありそうだ。

脱マスクの動きが出てきているような状況下、ポストコロナを見据えた社会の中で、DX銘柄を選別する動きが起こり、それぞれの企業が持つ得意分野やビジネススタイルに対しての評価に変化の兆しが生じているのではないか。

 

DX(デジタルフォーメーション)は企業が恒久的に取り組まなければいけない課題であり、様々な業態やターゲットとしている事業領域がある。

 

一例をあげると、イーコマース。コロナ禍における象徴的な存在であった「巣ごもり消費」を含めたECは消費者動向や購買意欲に大きく左右される特徴がある。在宅時間が減少し消費が一巡した可能性や出品数の鈍化、購入頻度の減少の影響もあるが、昨今の値上げラッシュの中で消費そのものにブレーキがかかっている可能性がある。下位にランキングされたメルカリやBASEの苦境は当面続くのではないか。

食事宅配のファンデリーも下位にランクされているが、割高でも受け入れられていた消費の消滅が今後も想定される上、人材確保や広告費といった先行投資費用は環境問わず負担となる。

5月24日の朝刊にも関連記事があり、米国ズーム、ショッピファイ、ドキュサインについても増収基調は維持できているが減速が明らかであるとの報道で、ネットフリックス、ぺロトンについては、コロナ前の時価総額すら下回ってしまっている。企業、消費者が支出を絞り、コストを削減する中での更なる脅威は、マイクロソフト等、大手の参入とのことであった。

 

一方でその変化を取り込めた企業ほど今回の最終損益の改善が大きかったのではないか

。社会の行動規範や働き方を含めたライフスタイルの変化をターゲットとしている企業には、経済のリオープンが好機になりえる。コロナ禍での行動制限や制約があるから導入したサービスが、日常的なシーンで「必要性」によって利用されることが想定されるからである。今回のランキングにおいての改善上位にあるkudanやトランスGなどはその最たるものであると思われる。

 

マザーズ指数は昨年高値からの下落率でリーマンショック時の下落をも上回る。グロース株が苦境であるのは金利上昇局面において事実であるが、その中でこそ反騰が期待される銘柄も安く拾えるのではないだろうか。かのウォーレンバフェットが2008年のリーマンショック時に株主への手紙で書いた一節「悲観は友、陶酔は敵」これはまさに今の環境にこそ当てはまる言葉である。