ドコモショップ700店閉店に見る、おもてなしからの脱却
インターネットでの契約手続きや端末の購入が増えているほか、ネットでしか契約できない格安プランahamoの契約数が伸びていること、オンラインでの接客が主体になっていくことを踏まえての決断とのことであるが、一番の決め手であり本音は「対面サポートの負担が大きい。」ということではないだろうか。
ドコモショップで機種変更をしたことのある人ならイメージできるかと思うが、機種変するだけで半日はかかる。プラン等の手続きでもそれなりに時間はかかるし、混み合っていれば待ち時間だけで数時間になる。
そして、順番を待っている間に一番ストレスになるのが、ウェブで完結する手続きを店舗でやるユーザーの多さである。これは店舗のスタッフにとっても負担であろうし、経営上のコストでもあると思う。
さらに厄介なのは対面接客特有の面倒くささ。スマホに不慣れな高齢者であれば説明に時間がかかるであろうし、携帯の不具合を訴える顧客であれば来店時からかなり不機嫌にケンカ腰で対応を求めてくることもあるだろう、理不尽なクレームめいた言いがかりも日常茶飯事ではないだろうか。とにかく長時間にわたり店員が拘束され疲弊するのである。
ドコモからすればコストパフォーマンスが悪くCS(顧客満足)やCX(顧客体験)の向上は望みづらい、一方で店舗に訪れる一般のユーザーにとってはタイムパフォーマンスが悪いのである。店舗を削減していくという決断はなるべくしてなったような印象を受ける。
ここに見て取れるのは、過剰サービスからの脱却を日本企業が模索し始めたということではないだろうか。海外旅行に行ってコンビニやファストフード店員の愛想のなさに驚くことは多いが、日本のサービス業はやり過ぎである。つまり労働生産性が著しく低いのである。
日本生産性本部(以前「今年の新入社員は~型」と発表していたシンクタンク)が日本のサービス部門の労働生産性はアメリカの50%、ドイツの60%程度しかないというは調査結果を発表したことがあるが、裏を返せば、日本のサービス業は伸びしろが大きいということでもある。
「ドコモがahamoで重点的に狙った若年層ユーザーの獲得は順当。」という井伊社長のコメントもでており、シンプルで無駄のないサービスを選好する価値観が社会に醸成されてきていると考えてもよいのではないか。お客さまは神様ではなく、1消費者である。